2012年9月16日日曜日

君を幸せにする「学校」

天野敦之さんのワークショップに参加したという角田尚子さんのブログを読んでいて、天野さんってどんな人だろうと、アマゾンの古書店から取り寄せた(新刊は在庫なし)一冊が、『君を幸せにする会社』です。予想以上におもしろく、君を幸せにする「学校」と置き換えて読んでみました。さびれた温泉宿を社長の「クマ太郎」が、社員とともに再生するストーリー。
〈どれだけ社長がお客様の幸せを唱えても、ノルマの達成度合いで人事評価している限り、社員は真剣にお客様の幸せを考えようとはしない。〉
〈「そうだ。この機会に評価制度も変えよう。お客様を幸せにした人が評価されるような評価制度にしよう」〉
〈成功は幸せの条件じゃない。むしろ逆に、成功を目指して競争すれば、感謝の心を忘れ、幸せから遠ざかる。〉
〈自分に克てば、誰かを傷つけることはないし、みんなが自分に克つことを目指せばみんなが輝ける〉
岬中学校の目標は、「安心して学べる楽しい学校づくりをとおして、一人ひとりが輝く」です。他人と競争するのではなく、「自分に克つ」そんな生徒を育てる環境をつくりたいと思いました。

2012年9月11日火曜日

子どもが発言したくなる授業

若い教職員の合宿の成果を紹介します。どうすれば子どもが自主的に発表するようになるかを考えあったグループの作品です。基本は、子どもをとことん尊重すること。具体的には、3つあがりました。一つは、「いいね」と認めること。2つは、「ほかには?」をやめる。これは、教員が想定した模範解答があって、それを出させるような授業はやめようという、結構重要な要素です。「それから、どうかな?」「今の発言につづいて、どう?」という感じで、子どもと子どもをつないでいくイメージで発言を促したいですね。3つは、せっかく子どもが答えたのに、先生が言い直したり、大きな声でくり返すこと。こうなると、子どもが発言を聞きませんよね。あくまでも、子どもの声、子どもの言葉を尊重する。だから、うなずくしかない。この3つを心がけるだけでも、ずいぶん授業がちがってくると思います。

2012年8月22日水曜日

カナダのメディアリテラシーに学ぶ

8月21日は、続いて刺激的な学びが夜7時からもありました。国際人権大学の実現をめざす大阪府民会議の総会のあとの講演会で、カナダのトロント州でメディアリテラシー教育に取り組むアリソン・マンさんのお話を聞くことができました。一番の気づきは、日本はこれほどメディア社会なのに子どもたちがメディアについて学んだり考えたりする機会がないということです。アリソンさんから学んだことは、朝からのWYSH教育で学んだことと合わせて、「生きることはアート」(月刊「ヒューマンライツ」)に書こうと思っています。写真は、講演の一こまです。

WYSH教育全国研修会

8月21日、京都で行われたWYSH教育全国研修会に参加しました。以前から京都大学の木原雅子さんの活動に関心がありましたので、一日の研修をどう組み立てられるのかを含めて、WYSH教育について学びました。一番学んだのは、教育は技術じゃない。下手くそでもいいから、生徒と本気で接することができるかどうかが肝心なんだということです。研修会の会場に、こんなかわいい箱が置かれていました。刺激的な7時間でした。

アクションプラン⑦ドラマのある学級を

アクションプランの最後は、豊中市、堺市、兵庫県西脇市の小学校の3人。テーマが、「ドラマのある学級を! 子ども同士がつながるために」でした。普段の授業では、自分を受け入れてもらえる集団づくりを行い、その積み上げのゴールとして、「涙」のある「感動」のあるイベントがあります。準備期間から本番まで、どんな活動を積み上げていくのかが大事だと。でも、予想できることだけじゃなく、突発的におこるトラブルなんかが子どもをつないていくチャンスなんだという核心が出されました。そう捉えると、ある意味「トラブル歓迎」という構えができますよね。

アクションプラン⑥子どもどうしのつながり

第6のグループは、河内長野市、堺市、五條市の小学校と岬中学校の4人で、「子どもどうしのつながり」というテーマでした。子どもどうしがつながるために、まず教師と子どもの個人ノート、つぎに子どもと子どもがつながるための個人ノート、クラスとしてつながる「発表の場」という手法が出されました。このノートは、教職員がつながるためにも有効ではないか、と。そして、おたがいを知ることが生きる力につながるんだというこのグループの大切にしたいことを強調していく発表でした。

2012年8月21日火曜日

アクションプラン⑤分かる楽しい授業の工夫

第5グループは、奈良県五條市の小学校、八尾市の小学校、和泉市の小学校と門真市の中学校の先生4人で、テーマは「分かる楽しい授業の工夫」でした。この発表の特徴は、授業のことだけに留まらず、家庭の協力を学級通信や家庭訪問でとりつけたり、子どもや指導方法について教師間で情報共有するといった総合的なプランになっていることです。授業については、今何を学んでいるのかをはっきり示したり、子どもの参加を促す工夫があったり、短い時間でしたが、よくまとまっていました。

2012年8月20日月曜日

アクションプラン④熱い組織づくり

第4のグループは、高槻市の中学校、小学校、豊中市の小学校、奈良県香芝市の小学校の4人のメンバーで、テーマは「熱い組織づくり」です。「うちの学校は、学級通信が出せないねん」という一人のつぶやきからプランがスタート。若い人がつながり合って、これはやったらあかん、それはやめておこうという職場の制約をはね返して行こうというもの。そんな若手のグループを「新鮮組」と呼んで、どんどん目の上のたんこぶを小さくして行こう、と。もちろん、自分の学校だけでなく、小中がつながり合うことによって、内に目を向けるだけでなく、中学校や他の小学校のいいところをどんどん採り入れていこうというプランです。

エンパワメント・ワークスのデザイン

8月12日に子ども教育広場が主催した「若手教師エンパワメント・ワークス」のアクションプランを紹介していますが、先日、岬中学校の参加者に改めて感想を聞きました。「とてもよかったです。自分がどこで止まっていて、本当は何をしたいのかがはっきりしました」とのこと。参加を呼びかけてよかったと思いました。写真は、ワークスの立ち上がり、基調講演を聴く皆さんです。会場の設定は、丸テーブルの上に花一輪を活けて、それを円状に10テーブル。ワールドカフェとオープンスペース・テクノロジーの両方ができるようにデザインしました。

2012年8月19日日曜日

アクションプラン③認め合える集団づくり

3番目のグループは、貝塚市、豊中市、愛知県岡崎市、高槻市の4人の小学校の先生。テーマは、「一人一人が表現でき、認め合える集団づくり」で、つまづきの見られる子ども、授業のときに発言できない子どもに焦点を当てて、どのような集団づくり、授業づくりをしていくかということでした。模造紙の最後の段は隠されていて、最後にこの大きな文字が登場し、「私たちの言いたいことは、学びアイ、高めアイです」というところで拍手が起こりました。

アクションプラン②子どもがつながり合う

アクションプランの二つ目は、和泉市と堺市の小学校の3人の先生の発表で、「子どもがつながり合う学級づくり」がテーマでした。目の前の子どもたちは、自己中心的で、まわりが見えない、人の話が聞けないということが気がかり。放っておくと、学級崩壊になってしまう場合もある、と。そこで、まず授業を大切にして、授業の中で子どもと教師がつながり、子どもと子どもをつないでいこうと、次のようなプランにまとまりました。

アクションプラン①意欲をたかめる

この夏のエンパワメント・ワークスでは、参加者が3人~4人のグループを作って、学んだことをアクションプランに仕上げてくれました。7つのグループのプランを順に紹介します。まず第1のグループは、河内長野市の中学校、貝塚市の小学校、岬町の中学校の3人で、「意欲を高めるために」というテーマ。やる気をなくしている子、しんどそうにしている子にどうしたら元気がともるのか、その手立てが一枚の模造紙にまとめられています。

エンパワメントのテーマ「熱と涙」

今年のエンパワメント・ワークスのテーマは、野口克海代表の基調講演で出された「熱と涙」がテーマだったように思います。野口代表は、若い教職員に次のように語り始めました。
〈教育の原点は、この「熱と涙」やと思うんです。熱い先生がいてくれたら、子どもはもっと燃えるようになる。それに、教師という職業は、涙が出るということがいいんですよ。卒業式、絶対泣くやろ。文化祭のときに、あのやんちゃな子が台詞を一生懸命覚えて、「あいつがあんなにやってる」と思ったら、劇を見ながらぼろぼろ泣くやん。「おまえなんで万引きなんかするねん」と万引きした子を抱きしめて、泣きながら怒るやん。子どもと一緒に泣ける仕事って、世の中にこんなあったかい仕事ってあるかな。〉

2012年8月15日水曜日

若手教師エンパワメント・ワークス2012

8月12日(日)シティプラザ大阪で、第9回「若手教師エンパワメント・ワークス」を開催しました。第9期生25人とスタッフ25人(1期~8期生を含む)の合計50人で、たっぷり「まじめなおしゃべり」をして、一人一人の2学期以降のアクションプランを発表することができました。やはり若い人は職場では一歩引いてしまうんですね。毎日の子どもとの対応や授業準備に追われてもいます。「そもそも、あなたはどんな先生になりたいの?」「今日から自信持ってやったらいいよ」「教育の原点は、熱と涙じゃないかな」そんなスタッフの声かけが、はじめ硬かった参加者に、とてもすてきな笑顔をもたらしてくれました。プログラムは、こんな感じです。

2012年5月21日月曜日

子ども教育広場inとよなかのプログラム

5月19日(土)
1.イントロダクションスピーチ「教育で大事にしたいこと」 野口克海
2.ワールドカフェ「この合宿で解決したい私の課題」 岡田耕治
3.読み聞かせ「伸ちゃんのさんりんしゃ」 下中恵子
4.実践報告「保健室・事務室より」養護教員部、事務職員部
5.ワークショップ「体と心をほぐそう」 工藤純子(劇団わらび座)
6.みつばちブンブンカフェ「どうするこんな時 保護者対応」 野口克海 岡田耕治
7.さいころトーク 岡田耕治

5月20日(日)
8.ワークショップ「信頼ベースの学級ファシリテーション」ちょんせいこ
9.ふりかえり「ミニ・アクションプラン」 岡田耕治
10.まとめ 野口克海

2012年5月20日日曜日

子ども教育広場inとよなか

5月19日20日と、みのお山荘で9回目の「子ども教育広場inとよなか」を開催しました。今日の毎日新聞朝刊にも取り上げてくれています。私のワークショップは、「みつばちブンブンカフェ」というのをやりました。グループで保護者対応について出し合い、解決策を考えるというものです。写真は、この合宿で使った模造紙です。

2012年5月5日土曜日

「前向き子育てブックレット」

角田尚子さんがブログで紹介されていたので取り寄せて、今日子どもの日に読みました。「トリプルP」というプログラムの教材で、保護者が子育てスキルを高め、子どもと前向きな関係を築いていけるように研究された家族支援システムです。次のようなことを学びました。
・子どもと良質な時を過ごす。・好ましい行動は、ほめて、注目する。(ささいな問題行動は無視することもあり)・子どもがおもしろくて夢中になれるものをたくさん用意する。・子どもとルールについて話合い、家族のルールを決める機会をつくる。・問題行動に対しては、穏やかにはっきりとそれをやめるように言い、代わりにどうするのかを伝える。・問題行動には、ただちに、一貫して、毅然とした態度で対処する。(クワイエットタイムという手法とタイムアウトという手法が紹介されています。)・子どもには適切な行動を期待するが、完璧は求めないようにする。・保護者自身が自分に厳しくしすぎないようにする。「あなたも学んでいるのです」・自分自身を大切にする。「あなた自身のニーズが満たされていると、子どものニーズに応えやすくなります」などなど、すこしゆるめなのがいいですね。子育てがうまくいっていないと感じている保護者が多いですから。

2012年5月3日木曜日

ヒューマンライツ5月号

「ヒューマンライツ」5月号が出ました。毎月「生きることはアート」という連載を書いているのですが、今月は「対話から始まるおとなの学び」という特集の一つを書きました。上杉孝實先生の理論編からはじまり、ワークショップの流れを私が、4人の参加者が感想を寄稿しています。また、もうひとつのワークショップの報告を編集部が書いてくれていますので、「学びのデザイン」を考えるいい特集になっています。編集部の報告のさわりを。
〈今回、ワールド・カフェに参加して私が得たキーワードは「自己を捉え直すちから」である。出来上がってしまっている自分を相対化して、自分自身がどのような要素で構成されているのかに気づくためには、立ち止まって考えることが何よりも必要だ。〉

2012年5月2日水曜日

『ボトム・アップの教育改革』

野口克海編著、三晃書房1998.4
子どものことをよく知っているのは学校現場です。子どもの実態をよくつかんで、その上に立って、子どもたちが笑顔で来るような、喜んで行きたくなるような学校の教育内容をその学校の独自性のもとにつくっていくことが、本当の教育改革であるはずです。
今、求められている教育は、子どもが主役の授業です。先生が子どもの意見をよく聞き、子ども一人一人をよく把握して、子どもたちが主人公になったボトム・アップの教育をすることが求められています。

2012年4月30日月曜日

酒心館ホール

4月29日、これからの会の髙井さんと神戸の酒心館ホールへ行ってきました。ヨー・キムラ・トリオのクラッシック・ジャズを聴くのが目的です。トリオのピアノが小川理子さんで、小川さんに7月22日に野口代表の古稀祝賀会に演奏していただくため、ご挨拶をかねて出かけました。酒心館は清酒福寿の醸造元で、神戸の震災を機に酒蔵だけでなくホールなどもつくって、文化の発信をしているとのこと。コンサートの中休みにきき酒がふるまわれましたので、つつじ色に。

2012年4月27日金曜日

ほんものに触れる

野口代表格言集003
なぜ、深くて重いはずの人権の問題が、子どもたちの心の底にズシンと入り込んで、「生き方」にせまるものとなりえないか。反発を生んだり、上すべりなものになってしまうのか。その答えは、“ほんものに触れていない”ということにつきる。言い換えれば、教える側の教師が、“ほんもの”かどうかということは、教える人間が“本気”で子どもたちに向かっているのかということであり、“本音”を語っているのかということである。  『私の子ども党宣言』明治図書

2012年4月26日木曜日

自分の脳みそで

野口代表格言集002
乱世に生きる人間は、たくましく自分の脳みそで考えなければなりません。同時に、これまでの人類が犯してきたいろんな過ちからいえば、ボーダーレスの世の中になればなるほど、人権感覚や人間としてのやさしさを持っていなければなりません。

2012年4月25日水曜日

攻めと子ども党

子ども教育広場関係の事業で、『野口克海 格言集』を出すことになりました。しばらく格言集の記事を続け、編集して出版します。よろしければお付き合いください。
格言001 変革の時期のリーダーは、「攻め」でなければならないというのがひとつ。受け身にまわったらだめやで、攻めて攻めて攻めなあかんで、ということを言ってきました。もう一つは、子ども党で行こう。子どものためだと思ったら、とことん行くということです。攻めというのは、実はたくましさであり、強さです。子ども党というのは、優しさであり、あたたかさです。(『教育はこれかがらおもしろい』)

2012年4月23日月曜日

今、読むべき本

「日経ビジネス アソシエ」が「今、読むべき本」という特集をしています。テーマ別にその分野の「目利き」が何冊かを紹介しているので、その中の私の読んだ本(書名の後ろに○)、読みたい本(△)を1冊ずつ選びました。
1.問題解決 『考具』△ 加藤昌治 阪急コミュニケーションズ1575円
2.リーダーシップ 『リフレクティブ・マネージャー』○中原淳・金井壽宏 光文社新書945円
3.会議 『すごい会議』△ 大橋禅太郎 大和書房1470円
4.自己啓発 『プロフェッショナルの条件』○ P・F・ドラッカー ダイヤモンド社1890円
5.発想力 『スモール イズ ビューティフル』△ E・F・シューマッハー 講談社学術文庫1260円
6.歴史小説 『凶刃』○ 藤澤周平 新潮文庫662円
7.中国古典 『菜根譚』△ 中村璋八 講談社学術文庫1313円
8.健康管理 『からだが変わる体幹ウォーキング』○ 金哲彦 平凡社新書756円
9.メンタルケア 『レヴィナスと愛の現象学』○ 内田樹 文春文庫780円
10.子育て 『哲学する赤ちゃん』△ アリソン・ゴブニック著 亜紀書房2625円
11.社会保障 『世代間格差』○ 鈴木亘 講談社現代新書882円
12.次世代エネルギー 『再生可能エネルギーの政治経済学』△ 大島堅一 東洋経済3990円
13.中国 14.韓国 15.中東 は、現在選定中です。

2012年4月22日日曜日

一冊を一文で

中学校の現場はフルスピードですので、ゆっくり読書をする余裕がありません。朝読書が唯一の読書タイムだったのに、朝ドリルに替わっている学校が増えています。そんな中で一冊を一文で表せないかとチャレンジしたのが、この模造紙です。岬中の生徒集会で生徒や教職員に話したときに使ったものですが、クラス用にも欲しいと何枚か同じのを書きました。忙しいみなさんに。

2012年4月21日土曜日

子ども教育広場inとよなか打ち合わせ

5月19日20日に行う「子ども教育広場inとよなか」の打ち合わせを豊中市教職員組合の方々と行いました。毎年5月に行うこの合宿も9回目を数えます。若い教職員とともに、夜どおし語り合う学びの場がたのしみです。終了後、野口代表にシェラトン都ホテルのバーに連れて行ってもらいました。代表が若い頃、ソビエト連邦を旅して、クレムリン宮殿でガガーリン(「地球は青かった」という言葉を残した宇宙飛行士)らと飲んだという「モスコミュール」をいただきました。

『天才アラーキー 写真ノ方法』


 フェイスブックに写真と俳句を載せはじめました。俳句は書けても、写真となると全くの素人の私。そこで、にわかにこの本を読んで、写真の本質を学んだところ、俳句や教育との共通点を見つけました。次のようなところを記憶に留めたいと思います。

〈自分が相手を解釈して、自分の考えに添うように、添う方向で撮ろうとかしちゃダメなのよ。そうじゃなくてさ、本能的にパッと感じて撮らないと。これはね、こういうことにも関係してきますよ。ずーっとなんでもかんでも撮りつづけるってことも必要だけど、生活を、人生を、ちゃんとそれなりに鍛えないといけないってことにさ。〉

 これは、私の師匠の鈴木六林男が言っていたことと同じです。俳句は感じたことを書くんだと。席題を出し合う句会などで、私たちがうんうんと頭をひねっていると、「考えたらあかん」とよく言われました。

〈ヒットラーが写ってる写真を見てごらんよ。みんな下から撮られてるでしょ。上から見下ろされ、たたかれるような写真はないでしょ。見あげて撮るとか見おろして撮るとかで意味が出てくるのよ、写真は。だから、俺の場合は必ず視線をまっすぐ、水平志向って感じ、パッと。それがいいんだね。それがまあ、俺の基本。〉

 なるほど、これから私も水平で撮ります。

〈世界のアートの中で日本って独特のクセがあるみたいよ。ちょっとこう傷物にするっていう。傷っつうんじゃないけどさ、なんかこう壊すっていうか汚すっていうか、完璧じゃ嫌っつうようなの。〉

 これは、鈴木六林男は「瑕瑾(かきん=きずのこと)を残せ」と言うてましたね。特に、何句かを並べるとき、いい俳句ばかりだとおもしろくない、と。

〈写真は現実を見せられないっつうことですよ。写真と現実は違うだろう? 写真は、現実に触発された何かなんだな。嘘つきの(ほう)が現実に近いってことがあるからね。現実は幻実です。〉

 俳句では、客観写生が大切と言われていますが、写真でも現実とは違うという感覚なんですね。「現実に触発された何か」を書くんだという思いで臨んだらいいんですね。

〈ほんとはね、絵でも音楽でも、そんな、ギャーってなったらいいもんできるわけないって。もうひとりの冷静なる自分が自分の中にいないとさ。こんなあ、酔ってちゃダメですよ。でもね、酔いだからね、集中っつうのは。集中っつうのは陶酔なんだよ。そんで、陶酔する自分を見ている自分がいないとダメですよ。〉

 これはいいですね。鈴木六林男は、俳句は三人に分かってもらうように書いたらいいと言ってました。そない大勢の人に分かってもらわなくていい、と。その三人のうちの一人は自分やとも言ってました。アラーキーと同じことを言ってますね。
 14歳のときから40数年俳句をやってきたんだから、改めて写真を学ばなくても、いい写真が撮れる。これが、本書を読んだ私の結論です。

2012年4月20日金曜日

『舟を編む』三浦しをん


光文社2011.9
 今年度の本屋大賞を受賞した一巻。『大渡海』という中型の国語辞典を作り上げるまでの、地味だけれども熱い物語です。次のような会話は、記憶にとどめたいと思います。

■初代編集者(荒木)「ひとは辞書という舟に乗り、暗い海面に浮かびあがる小さな光を集める。もっともふさわしい言葉で、正確に思いをだれかに届けるために。もし辞書がなかったら、俺たちは茫漠とした大海原をまえにたたずむほかないだろう」

■監修者(松本先生)「言葉は、言葉を生みだす心は、権威や権力とはまったく無縁な、自由なものなのです。また、そうであらねばならない。自由な航海をするすべてのひとのために編まれた舟。『大渡海』がそういう辞書になるよう、ひきつづき気を引き締めてやっていきましょう。」

■二代編集者(馬締(まじめ)主人公)「そういえば、西岡さんにも言われたことがあります。『その言葉を辞書で引いたひとが、心強く感じるかどうかを想像してみろ』と。自分は同性を愛する人間なのかもしれない、と思った若者が、『大渡海』で『あい【愛】』を引く。そのときに『異性を慕う気持ち』と書いてあったら、どう感じるか。そういう事態を、俺はちゃんと想像できていなかったんですね」

 そして、ファッション雑誌の編集から遅れて辞書編集部に入った岸辺という女性は、次のように鮮やかに描写されています。
■〈辞書づくりに取り組み、言葉と本気で向きあうようになって、私は少し変わった気がする。岸辺はそう思った。言葉の持つ力。傷つけるためではなく、だれかを守り、だれかに伝え、だれかとつながりあうための力に自覚的になってから、自分の心を探り、周囲のひとの気持ちや考えを注意深く汲み取ろうとするようになった。岸辺は『大渡海』編纂を通し、言葉という新しい武器を、真実の意味で手に入れようとしているところだった。〉

2012年4月19日木曜日

『教育はこれからがおもしろい』


野口克海・日本教育新聞社1994.12
 大阪の義務教育が一番幸福だった時代に生まれた一冊。刊行当時、野口さんは大阪府教育委員会の義務教育課長で、各地で講演した内容を一冊にまとめている。章立ては次のようになっていて、タイトルを見るだけでも勢いが感じられる。
1.教育をとりまく現状と学校の果たすべき役割
2.勢いのある大阪の教育づくりを
3.同和教育のこれまでとこれから
4.今から出発を、今から改革を
5.これからの子育て
6.初めて教壇に立つ人達へ贈る
 改めて読み直してみて、「リーダーのあり方」というところに注目する。野口さんが挙げているリーダー像は、次の7点。
1.どんなことに対しても「ドンとこい」と骨太に構える。
2.部下の面倒をていねいにみる。
3.自分を開く。自分が考えていることを部下に伝える。
4.「子ども党」でいく。絶えず子どものために何が大事かを考える。
5.それぞれの良いところを信頼して、任せてゆく。
6.「5つ教えて、3つほめ、2つ叱って人を育てよ」と言われる。最低2つは叱る。叱るときはあけっぴろげに。
7.「長」のつく者は、誰でも不安があるし、孤独だ。部下に好かれようと思わず、好きになる。好きになって職務をきちっとやり切ること。